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労務相談Q&A

労働基準法及び判例等にかかるQ&A

労働条件の不利益変更

2015年8月25日
A

会社の経営が著しく悪化したので、賃金を10%カットするために就業規則(給与規程)の変更を社員に提案したのですが、合意に至りません。どうしたらいいでしょうか。

Q

使用者が就業規則を一方的に不利益に変更することは、原則として許されません。許される場合であっても、特に賃金や退職金などの労働条件の変更については、そのような不利益を労働者に課すだけの高度な必要性に基づいた合理的な内容のものであることが求められます。

そうした合理性があるか否かは、これまでの裁判例では、次の点を中心に総合的に勘案して判断されています。

1.変更によって労働者が被る不利益の程度および内容の社会的相当性(同業他社の状況の勘案など)
2.経営悪化の度合いなど、変更の必要性の程度
3.労働時間の短縮など、不利益な変更に対する代償措置の状況
4.労働者や労働組合との話し合いの経緯

今回の賃金カットが、以上の内容に合致するかを再確認の上、十分に社員と話し合って下さい。

 就業規則による労働条件の不利益変更については、秋北バス事件の判決(最高裁大法廷 昭43.12.25)で一定の判断が示されています。すなわち、「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者においてこれに、同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」というものです。

 このように就業規則の不利益変更の効力は、それが合理的なものであるかどうかで決定されると解されています。

 そして、合理性の有無は「具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経過、他の労働組合又は他の社員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである」(最高裁第二小法廷判決 平9.2.28 第四銀行事件)とされています。