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労務相談Q&A

労働基準法及び判例等にかかるQ&A

試用期間の延長、及び試用期間の途中での解雇の可否

2015年8月25日
A

試用期間3か月ということで入社した社員がおり、もうすぐ3か月が経過しようとしているところなのですが、当初想定していたよりも業務の習得度が遅く、あと1か月程度、試用期間を延長して本採用するかどうかを判断したいと考えています。試用期間の延長は認められるのでしょうか。

Q

試用期間であっても、すでに雇用契約は成立しており、試用期間の延長は労働条件の変更にあたります。試用期間の定めをする場合には、就業規則などに記載することが必要であり、その延長の可能性や期間、どういった場合に延長となるかなどの合理的条件を定め、労働契約の締結に際し、あらかじめ労働者に周知させていない限り、原則として、延長は認められないと解されています。また、定めがある場合でも、当然に認められるものではなく、合理的な理由や特段の事情のある場合に限られます。

試用期間とは、本採用の前に労働者の適性・能力を評価して本採用(正社員)とするか否かを決定する期間です。一般には、解雇権が留保された労働契約とされており、解雇するにあたっては、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる場合であることが必要ですが、通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められると解されています。また、会社によっては、労働条件などの面において正社員と差を設けているところもあります。そのため、試用期間中の身分関係は不安定なものであり、むやみに延長が認められるべきものではありません。

 会社において試用期間を設けている場合は、就業規則などにその意味、期間、延長の有無などの内容を記載し、労働者と雇用契約を締結するにあたり、あらかじめ定めておくことが必要です。個別の労働契約において試用期間についてまで明示されない場合がありますが、この場合は、就業規則などが労働者に書面で交付されたりするなどして、雇用契約締結時に労働者に周知されていれば、試用期間が適用されることになります。(労働契約法第7条)

 試用期間の期間については、特に法的な制限はありませんが、その趣旨からして、労働者の能力や勤務態度などについての価値判断を行うのに必要な合理的範囲を超えた不当に長い期間は民法上の公序良俗違反として無効になる場合もあります。(名古屋地裁昭59.3.23判決 ブラザー工業事件)
ある調査では、約7割の企業が3~4か月程度という結果が出ています。

 試用期間の延長の有効性については、試用期間中に労働者が長期欠勤してその労働者の業務適正を判断するだけの期間がなかった場合など合理的な理由の有無、試用期間満了時までに延長する期間も明らかにして労働者に通知されているかどうか、延長される期間がその目的から判断して適正な期間かどうかなどが判断されます。(大阪高裁昭和45.7.10判決大阪読売新聞社事件、長野地裁諏訪支部昭和48.5.31判決上原製作所事件、東京地裁昭和60.11.20判決雅叙園観光事件など)