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労務相談Q&A

労働基準法及び判例等にかかるQ&A

業績不振による整理解雇

2015年8月25日
A

会社の業績不振が長期間にわたり、役員報酬や給与額のカット、希望退職の募集等を行ってきたものの、なお一層の人件費削減が必要となり、今般、整理解雇を行わざる得ない状況となってしまいました。その際に留意すべき点はあるでしょうか。

Q

解雇される労働者個人ではなく、会社の経営難を理由とする解雇を「整理解雇」といいます。経営上の困難があればいつでも行えるものではなく、裁判例では次の4つの要件を満たすことが条件となるという判断が一般的です。

 ①会社の存続のためには、人員整理が必要である。
 ②希望退職の募集など、解雇の回避をする努力をした。
 ③解雇対象者の選定基準が公正・妥当で、人選も合理的である。
 ④労働者や労働組合に十分説明し、納得を得る努力をした。

こうした要件を満たしているか確認し、整理解雇の対象となる社員や、社員代表者等との話し合いを十分に行いながら、手順を踏んで実施していくことが必要です。

①の「人員整理の必要性」については、「企業が客観的に高度の経営危機下にあり、解雇による人員整理が必要やむを得ないものであること」(神戸地裁尼崎支部判決 昭55.2.29 日本スピンドル製造事件)等の判断がありますが、「高度の経営危機」の程度は必ずしも「人員整理をしなければ倒産必至」とまでの必要性が求められているわけではありません。(岡山地裁決定昭54.7.31 住友重機玉島造船所事件)

②の「解雇回避の努力」については、企業は「解雇を避けるためできるだけの努力を払うべきであって、そのためには、下請の解約、希望退職の募集、配置転換等解雇以外に人員整理の目的を達し得る方法があって、しかもそれが容易である場合には、そのような手段を構ずべき信義則上の義務がある。」(東京地裁判決昭50.3.25 川崎化成工業事件)等とした判例があります。

③の「解雇対象者選定の合理性」については、客観的で合理的な基準(勤務成績、勤務年数、年齢、職種、企業への貢献度、解雇時の生活への影響等)を設定し、公正に適用しなければなりません。

④の「整理手続の適法性」については、労働組合または社員に対する説明協議義務が尽くされているかどうかが重要であり、十分な説明協議を行うことなく、抜き打ち的に解雇を行ったことを無効とした(大阪地裁決定平7.7.27 日証事件)ケースがあります。