労働社会保険関係、人事・労務管理、給料計算、就業規則、助成金申請から人間関係の管理まで会社の経営を幅広くサポートします。


社会保険労務士法人 馬車道パーソネル


PAGE TO TOP

労働契約

労働契約

平成30年1月から職業安定法が改正されました

従業員を採用するときは、①求人広告の掲載→②応募者との面接、試験→③採用通知→④入社(労働契約の締結) というのが一般的な流れです。

①の時点で、ある程度の幅をもたせた給与額や労働条件を明示して、④の入社に際して具体的な条件を明示することは法律違反とはなりませんが、近年は、ハローワークの求人だけでも「求人票の内容と実際の労働条件が違う」「基本給に残業代が含まれていると言われた」「求人詐欺」などの苦情が多く寄せられ、会社と従業員の間で訴訟に発展しているトラブルも起きています。

これらを踏まえて、本年1月から職業安定法が改正され、求人広告を出すときに明示するべき労働条件が増えたり、ルールの変更が定められました。一部は、ハローワークの求人では以前から記載していた項目ですが、今回は民間の求人広告でも明示が義務付けられました。

◆追加となった項目

①試用期間に関する詳細な労働条件

②裁量労働時間制が適用される場合はその旨

③固定残業代を採用する場合(下記の内容を明示する)

(1)固定残業代の算定基礎となる労働時間数及び金額(「〇〇時間分の時間外手当である」等)
(2)基本給に残業代が含まれる場合には、それぞれの内訳
(3)固定残業代の見込みより実際の残業実績が上回ったときはその差額を支払う旨

④派遣労働者として雇用する場合はその旨

また、求人票では「基本給20万円~25万円」など幅を持たせていた金額が21万円と決まった時や「手当が支給されなくなった」等の求人内容に変更があったときは、下記のアクションが必要となります。

①少なくとも内定通知の際には、決定金額や変更内容を応募者へ通知する

②書面により労働条件を通知するときは、新旧対照表を作るか、変更箇所に下線や色を付ける。

以上、いろいろと規制が増えた求人広告ですが、基本的には、応募する人も採用する企業も曖昧な表現は控え、採用後の「そんなこと聞いていない」「今頃そんなこと言われても」というようなトラブルを防止していく取組みが重要です。

 

 

定年後再雇用の賃金低下が違法とされた判決について

定年後に、嘱託従業員として1年契約で再雇用されたトラックの運転手3人が、正社員と同一の仕事なのに賃金に2~3割の格差があるのは違法だと主張していた裁判で、東京地方裁判所は、会社に対し、正社員と同じ賃金の支払いを命じる判決を言い渡し、運送会社側に、嘱託従業員に正社員の賃金規定を適用し、これまでの嘱託の賃金と正社員の賃金の差額の支払いを命じました。

これは、これまでの定年後の再雇用の在り方や判例とは異なる判断です。

これまでの判例では、「再雇用後の賃金が正社員の賃金の6割程度に下がるとしても、我が国の労働市場の現況や、定年退職後の雇用状況に鑑みると、これが公序良俗に違反するとまで認めることは困難である」としたX運輸事件(H22.9.14大阪高裁)のように、再雇用後の賃金減額は違法ではないというのが一般的でした。

しかし、平成25年4月に労働契約法第20条が改正(※)されてから、契約社員やパートタイマーなど非正規雇用の待遇格差をめぐる問題に世間の注目が集まるようになり、「同一労働・同一賃金」の考え方が、世間に広く認知されるようになりました。

安倍首相が今年1月の施政方針演説において、「ニッポン1億総活躍プランで同一労働同一賃金の実現に踏み込む」と発言したことは記憶に新しいことかと思います。

今回の判決では「職務が同一であるにもかかわらず、有期、無期雇用の間に賃金格差を設けることは、特段の事情がない限り不合理だ」「雇用確保のため企業が賃金を引き下げること自体には合理性があるが、財務状況などから今回はその必要性はない」と指摘されましたが、まさにこの流れに沿った判決です。

今回の判決を受けて、運送会社は東京高裁に控訴していますが、高裁でも今回の判決が支持された場合は、高齢者の継続雇用に関して国がおこなっている施策への影響は大きく、再雇用後の賃金減額をおこなっている企業は、再雇用制度の大幅な見直しを迫られることになると思われます。

また、現在、定年後に再雇用されている従業員から同様の訴えが出た場合には、この判決も踏まえながら対応していくことが必要となると思われます。

今後の高齢者の再雇用制度の方向性を占う意味でも、この事件は、今後の展開が注目されます。

 

※「契約社員などの有期雇用労働者の労働条件が、期間の定めがあるという理由により、正社員などの無期雇用労働者の労働条件と相違する場合に、業務内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」と規定されました。